[トランプ氏1年] 分断広げる「米国第一」を続けるのか
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 残念なことに超大国のリーダーとしての品格が全く感じられない。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼び、アフリカやカリブ海諸国を汚い言葉で侮辱したとも伝えられる。
 トランプ米大統領が就任して1年になる。世界の指導的立場を放棄したような言動には、米国民ならずとも失望を禁じ得ない。
 メキシコ国境の壁建設や医療保険制度(オバマケア)の見直しなど公約実現は軒並み停滞し、内政で目立った成果はない。
 外交では「米国第一主義」を掲げ、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」や環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明した。エルサレムのイスラエル首都認定では国際社会の強い反発を招くなど、自ら孤立を深めている。
 核・ミサイル開発を続ける北朝鮮政策では、「力による平和」を掲げるトランプ政権のもと、軍事衝突への懸念が消えない。
 国際秩序に背を向ける排外的な政策により、米国や世界が分断と排除の論理に覆われてしまうことを強く憂慮する。
 11月には中間選挙がある。トランプ政権の約2年間に対する国民の審判はどうなるか。
 支持層をつなぎとめるため、さらに内向きの政策を打ち出すことも予想される。試練の2年目とどう向き合うのか、世界が注目している。

■平和への責任重い
 政権1年目で目立ったのは、自国ばかりを優先し、「力による平和」を追求する姿勢だ。
 北朝鮮に対する圧力強化は必要だとしても、平和的な解決への道筋は一向に見えてこない。
 それどころか「核のボタンが机上にある」と述べた金委員長に、トランプ氏は「私の核のボタンの方がずっと大きく強力で、しかも作動する」と応酬する始末だ。
 核兵器をもてあそぶように子どもじみた威嚇を繰り返す両者は、東アジア地域の緊張を高めるばかりだ。
 昨年12月に公表した外交・軍事の羅針盤となる「国家安全保障戦略」は、圧倒的な軍事力の維持と経済再建を前面に打ち出し、「力」によって米国の優位を保つ方針を明確に示した。
 中国やロシアを国際秩序の現状変更を試みる「修正主義国家」と位置付け、あからさまに力を競い合う姿勢を見せる。
 来月発表する核戦略の中期指針「核体制の見直し」でも、「核なき世界」を掲げたオバマ前政権の戦略を変更し、核兵器の役割拡大を盛り込んでいる。
 核兵器の廃絶も、北朝鮮への国際包囲網も、国際社会が共通の目標を持って結束しなければ達成することはできないはずだ。
 トランプ政権には、理想を持って世界平和に貢献する重い責任を思い出してもらいたい。
 国内支持層向けの政策も、国際社会の不安定さを招いている。
 トランプ氏はエルサレムをイスラエルの首都と認定し、テルアビブにある米大使館の移転準備を始めるよう指示した。
 中東政策の変更は、大統領選での公約を実現することが狙いだ。だが、世界各地に反発のデモが広がり、反米感情が高まっている。
 国連が米政府に認定の撤回を求める決議案を採択した際には、トランプ氏は経済支援の削減を警告し、各国に圧力をかけた。
 高圧的な外交は到底認められない。あらためて中東和平実現への努力を促したい。

■支持率は最低レベル

 トランプ政権は昨年末、重要公約の税制改革法をようやく成立させた。だが、法人税減税が柱であり、最大の受益者は企業と富裕層だ。多くの国民に恩恵は乏しい。
 大統領の言動をきっかけにした人種や宗教の違いによる分断が広がり、メディアとの対立も続く。好調な経済を背景に上昇する株価とは対照的に、就任1年目の支持率は30%台で戦後最低レベルだ。
 トランプ氏の支持率と連動する形で共和党の支持率も民主党より10ポイント程度低い。政権への失望感が中間選挙での民主党への追い風となれば、政権と議会の「ねじれ」が起き、その後の政策運営は滞りかねない。
 さらに、ロシアによる大統領選干渉疑惑の捜査が進み、大統領の訴追や罷免に発展する可能性さえ出てくる。
 気掛かりなのは、トランプ政権への追従を強めるばかりの安倍政権の姿勢である。
 安倍晋三首相はトランプ氏とファーストネームで呼び合い、電話でも何度も会談するなど親密さを誇示している。
 日本と米国が経済的にも安全保障上も重要なパートナーであることは確かだ。だが、昨年来日したトランプ氏は防衛装備品の購入を露骨に迫っている。米国の言うがままに日本の防衛費を増大させることは許されない。
 安倍首相は「(日米の)首脳同士がここまで濃密に絆で結ばれた1年はなかった」と述べている。
 揺るぎない絆を強調するなら、米国による北朝鮮への軍事行動の可能性があれば、外交努力を重ねるよういさめる必要がある。
 日本はアジア諸国やEUなど、各国の指導者とも連携を深め、世界の秩序や人権、民主的な政治を守るため行動するべきだ。