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 ハンガリーの首都ブダペストは、もともとドナウ川を挟む二つの都市だった。古代ローマの要塞(ようさい)があるブダと商業で栄えたペスト。両方の魅力が相まって「ドナウの真珠」と呼ばれる街になった。

 川内川が東西に貫く薩摩川内市も似ている。川の北側に古代薩摩国府と国分寺が置かれ、南は水運を生かした交通の要として発展した。1875(明治8)年に両岸を結ぶ橋が架かり、にぎわいを増す。初代太平橋である。

 長さ200メートルを超える長大な木橋だった。地元の名工阿蘇鉄矢を棟りょうに、延べ2万3500人を動員し、2カ月で完成させたと言うから驚きだ。かつて豊臣軍と島津軍が和睦を結んだ、近くの泰平寺にちなんで名付けられた。

 しかし2年後、橋は西南戦争で敗走する薩軍の手で焼き払われる。官軍を阻むためだ。その後、3代目まで木橋が架けられ、4代目は半世紀も親しまれた鉄橋、現在は6代目に当たる。どれも人々の思いのこもった橋だったに違いない。

 「不落の橋」と題する朗読劇の制作を、市内の有志が進めている。戦火に焼かれ、洪水に流され、朽ちるたびに架け替えられたこの橋の不屈の歴史を伝えるためだ。完成が待たれる。

 ブダペストの「くさり橋」は世界遺産で観光名所でもある。太平橋は飾り気はないが、夜景に浮かぶ姿などなかなかのものだ。街のシンボルとして、もっと注目されていい。