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 庭木としてなじみが深いヒイラギは、葉の縁が鋭くとがっている。密集した葉の間を人が通るのは大変だ。防犯のため生け垣に植えている家庭もあるだろう。

 東京都東村山市にあるハンセン病の国立療養所多磨全生園は以前、高さが3メートルもあるヒイラギに囲まれていた。外部からの侵入者対策ではなく、園内で暮らす患者の逃走を防ぐのが目的だった(畑谷史代「差別とハンセン病」)。強い感染力を持つ恐ろしい病気のように扱い、患者を社会から孤立させた強制隔離の歴史を象徴するようだ。

 現在、全生園のヒイラギは低く刈り込まれている。人の心の垣根はどうだろう。誤った隔離政策の行政責任を国が認め公式謝罪した今も、差別と偏見は根強く残る。ハンセン病問題が解決したわけではない。

 鹿屋市の国立療養所星塚敬愛園で“垣根”を撤去する新たな取り組みが始まった。園の敷地に初めて誘致した障害者支援施設が完成した。高齢化で入園者は減っている。空いた土地を開放するのは地域との共生を目指す将来構想の一つだ。

 隣人と交流すれば、人間らしい生活を取り戻せる。損なわれた尊厳回復の一歩でもあるのだろう。自由に行き来できる明るく開かれた空間に、入園者の希望が見える。

 ヒイラギは年を経ると、葉のぎざぎざが消え人に優しくなる。ハンセン病への理解が広まり、尊重し合う社会の象徴になるといい。